シグナルインテグリティ(Signal Integrity : SI)とパワーインテグリティ(Power Integrity : PI)
シグナルインテグリティとはシグナル(Signal)とインテグリティ(Integrity)という単語で構成されている。シグナル(Signal)とは、電気回路を伝送するHigh(1)、Low(0)の信号のことを表す単語である。インテグリティ(Integrity)とは、和訳すると「高潔、誠実、完全な状態」という単語である。
つまり、シグナルインテグリティとは信号を本来のまま、崩れることなく、完全に伝送する信号品質を表す言葉である。シグナルインテグリティは、回路を伝送する信号だけでなく、計測した信号の信号品質を表す場合にも用いられる。
では、なぜ信号が本来のまま伝送されず、波形が崩れるのでしょうか?
それは、伝送線路の特性インピーダンスの違いによるミスマッチ(反射)や伝送線路間の干渉(クロストーク、EMI)、計測用プローブ等の影響を受けるためである。これらに関しては、随時『マイクロ波設計資料』をアップデートしていく予定である。
シグナルインテグリティの評価としては、アイパターンが用いられる。アイパターンは、時間ごとの電圧レベルの変化(000、001、010、011、100、101、110、111)を重ね合わせたものである。下図にアイパターンの例を示す。アイパターンAに比べて、アイパターンBは波形がなまり、オーバーシュートが生じ、ジッタも起きている。信号がHigh、Low切り替わる箇所は周波数の高い成分が含まれているため、高周波帯まで損失が小さい伝送線路でない場合、波形が崩れる(なまる)。また、不整合が生じている場合オーバーシュートが生じる。アイパターンによる評価では、中央部分の信号の開きが大きい(アイが開く)ほど信号品質が良い。
次にパワーインテグリティとはパワー(Power)とインテグリティ(Integrity)という単語で構成されている。パワーインテグリティとは、電源ラインの電源品質のことである。
ディジタルICなどに供給している電源電圧は常に安定しているわけではなく、ディジタルICの動作状況によって変化する。たとえば、急に大電流が流れるような動作をした場合、電源電圧は配線ラインのインピーダンスの影響を受け変動する。この変動幅が大きければ、ディジタルICの動作に悪影響を及ぼすことになる。また、複数の電源系を使用した基板などでは、ある電源系に重畳したノイズが他の電源系に影響を及ぼすことがある。
これらの影響を抑えることを考慮した設計がパワーインテグリティを考慮した設計である。