EMC設計

 

 EMCとは、Electro Magnetic Compatibilityの略語で、『電磁両立性』と訳される。他の電子回路や機器、システムの正常な動作を妨げる電磁ノイズの発生(エミッション:EMI*)抑制と電磁ノイズの影響を受けない妨害排他能力(イミュニティ:EMS*)向上により、電磁両立性を図るということである。

*EMI:Electro Magnetic Interference, EMS:Electro Magnetic Susceptibility

 ノイズの発生源は、メカあるいは電子的なスィッチングや放電、発振回路など急激な電流や電圧の時間変化すなわち\(\displaystyle\rm\frac{di}{dt}\)や\(\displaystyle\rm\frac{dv}{dt}\)で発生する。また、電線に電流が流れれば周囲に磁界が発生し、電位差があれば空間に電界が生じ、これらが時間的に変化すれば電磁界となる。

 ノイズの伝播経路としては、伝導と空間結合およびこれらの複合に分けられる。伝導は電源ラインや信号ラインなど導体を伝わる伝播経路であり、ノイズとしてはノーマルモードノイズ、コモンモードノイズがある。空間結合は、機器の筐体や内部パターンがアンテナとして作用し、放射または受信するもの、配線やパターンの浮遊容量による電界結合、大電流を流す配線、パターンやトランス、リレー等の電磁部品による磁界結合がある。

 EMC設計とは、ノイズの発生源から出るノイズを抑える、ノイズの伝播経路のアイソレーションを大きくすることで、機器から放射される、機器に影響を与えるノイズを抑圧する設計である。EMC試験は機器の最終段階で行われることが多いが、設計が進むにつれてEMC設計に対する自由度は低下していくので、設計の初期段階からEMCを考慮した設計を実施していく必要がある。

 マイクロ波機器を製作していく上で、直面する問題として筐体の隙間からの放射、受信がある。マイクロ波機器は内部でマイクロ波帯の信号を伝送しているので、筐体の隙間があるとその部分がスロットアンテナ(上記、空間結合)となり、マイクロ波帯の信号が放射されてしまう。放射を抑えるには極力、隙間を抑える筐体設計が必要となる(なお、スロットアンテナは隙間の短手方向が電波の偏波方向となるので、放射、受信しやすい偏波の向きが問題の隙間を特定するヒントになる)。

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